ももたろう 第2話 「白雪姫」
「お客様、お待たせ致しました」
ウェイターはそう言うと赤々とした林檎の乗った皿をのり子の前にそっと置いた。
「まぁ、美味しそう」
のり子がナイフとフォークを手に取ったところで、後ろのテーブルの男が声をかけてきた。
「お嬢さん、それは食べないほうがいい。毒が入っている」
振り返るとそこには、おじいさん、おばあさん、ガリレオ・ガリレイの3人がいて、ステーキを食べていた。
「おかしいと思ったのよね、ここはステーキのお店ですもの」
ガリレオ・ガリレイは続けて言った。
「犯人はこの中にいます」
「なんだい、まだ誰も死んでいないのに探偵気取りかい?」
振り返るとそこには、顎の割れた魔女と、顎の割れた王子と、顎の割れた7人の小人がいて、ステーキを食べていた。魔女は続けて言った。
「だいたい、それが毒林檎だという証拠はあるのかい?」
「食べればわかります」
ガリレオ・ガリレイはそう言うや否や林檎を一口食べるとそのまま眠りこんでしまった。
「これは大変だ、コナンが必要だ」
とおじいさんが言うと小人の1人が嬉々として腕時計型の麻酔銃を構えたが、
「もう寝とるよ」
というおばあさんの一言にしゅん、となった。ふと見ると奥のテーブルに大きな桃が乗っていたが、誰もが無視した。
「ガリレオさんは王子様のキスで目覚めるかもしれんのぉ」
と魔女が言うと、
「王子様顎割れてるし、私はウェイターさん×ガリレオさんがいいな」
とのり子が言った。意味がわからない。王子はさめざめと泣いている。
「少し状況を整理してみようか」
おじいさんは続ける。
「お嬢さんのところへ林檎が運ばれてきた時、わしらはステーキを食べていた。ガリレオさんが毒林檎を見抜くと顎の割れた婆さんが因縁をつけてきた。おや、怪しいとは思わないかね。婆さん、あんたお嬢さんの美しさに嫉妬して林檎に毒を仕込んだんじゃないのかい?」
魔女は反論する。
「バカをお言い。なんで私がこんな平凡な小娘に嫉妬するかね」
おじいさんは言う。
「およよ・・・違ったかぁ。もうおじいさんには誰が犯人だかわからんなぁ」
あきらめるのが早い。そしてそのまま皆黙り込んでしまった。
しばらくすると落ち着きを取り戻した王子が言った。
「みなさん、犯人探しの前にすることがあるんじゃないでしょうか?ガリレオさんを何とかしてあげないと」
おばあさんは言う。
「王子様、あんた顎は割れてるけど立派だねぇ」
おばあさんの言葉にショックを受けた王子はまた泣き出してしまった。
そしてまた皆は黙り込んでしまう。
しばらくするとウェイターがガリレオ・ガリレイの声を真似て喋り出した。
「だいたい証拠が出揃いましたね。私には犯人が分かりましたよ」
あまり似ていない。
「ウェイターさん、私にはわからない・・・誰が犯人なの?」
のり子がウェイターに聞くと、ウェイターは少し気まずそうな顔で、今度は自分の声で言った。
「犯人は、あなただ」